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札幌地方裁判所 平成6年(行ウ)5号 判決

札幌市手稲区曙一一条二丁目二番二号

原告

大内継也

札幌市豊平区月寒東一条五丁目三番四号

被告

札幌南税務署長 工藤春男

右指定代理人

栂村明剛

永野道男

木村俊道

折笠久雄

行場孝之

村末健文

房田達也

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、平成四年一二月七日付けでした昭和六二年九月二一日相続開始に係る相続税の更正処分のうち、納付税額一五一一万一一〇〇円を超える部分を取り消す。

2  控訴表は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (相続税の当初申告)

原告は、原告の実父である大内義二(以下「被相続人」という。)が昭和六二年九月二一日に死亡したことにより開始した相続(以下「本件相続」という。)の相続人四名(以下「相続人ら」という。)のうちの一名であり、他の相続人三名とともに相続人の申告書(以下「本件当初申告書」という。)を法定申告期限内である昭和六三年三月二二日に被告に提出した。

2  (相続税の修正申告)

相続人らは、平成元年七月六日に、別表の修正申告欄記載のとおり相続税の修正申告(以下「本件修正申告」という。)をした。

3  (遺産分割の確定)

被相続人の遺産のうち当初申告時の未分割財産は別表の修正申告欄記載のとおり二六五七万九五七五円であったが、未分割であった財産について、札幌高等裁判所の平成四年二月五日付け決定(以下「高裁決定」という。)があり、遺産分割が確定した。

4  (相続税の更正)

未分割財産の遺産分割の確定により、本件修正申告にかかる各人の課税価格に異同が生じたため、相続税の再計算が必要となった。

このため、被告は、原告に対して、平成四年一二月七日付けで、本件修正申告にかかる納付税額を一六一一万一一〇〇円から一七九八万〇八〇〇円に増額させる更正処分(以下「本件更正処分」という。)を行った。

5  (異議申立及び異議決定)

原告は、本件更正処分に不服があるとして、平成四年一二月一四日、原処分庁である被告に対して異議申立を行った。これに対し、被告は、平成五年三月八日付けで、本件更正処分は適法であるとして原告の異議申立を棄却する旨の決定をした。

6  (審査請求及び審査請求に対する裁決)

原告は、被告がなした右決定について、なお不服があるとして平成五年三月二四日、国税不服審判所長に対し審査請求を行った。これに対し、国税不服審判所長は、平成六年四月二八日付けで、本件更正処分は適法であるとして原告の審査請求を棄却する裁決を行った。

7  (結論)

しかし、被告がした本件更正処分のうち原告の納付税額一六一一万一一〇〇円を超える部分は、原告の相続額を過大に認定したものか、仮に原告の相続額の認定が正しかったとしても、原告以外の相続人の相続額を過小に認定した結果総相続額に占める原告の相続額の割合を過大に認定したために原告に過大な相続税を課したものとして違法であるから、本件更正処分のうち本件修正申告にかかる納付税額一六一一万一一〇〇円を超える部分の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1ないし6の各事実は、いずれも認める。

2  同7は争う。

三  被告の抗弁(本件更正処分の適法性)

1  (原告の課税価格)

原告が本件相続によって取得した財産は、不動産の価額三六七三万一三六五円、分割代償金二七六万九一二四円及び定期預金五六三万三一四八円の合計四五一三万三六三七円であり、相続開始前三年以内に被相続人から贈与を受けた財産の価額は一四九万七五六六円である。

原告が取得した財産の価額から控除される債務等の額はない(被相続人の債務総額は六一二万七五一四円であり、最高判決は右債務を控除した後で前記の分割代償金二七六万九一二四円を算出している。)。

したがって、課税価格は、右の四五一三万三六三七円に一四九万七五六六円を加えた四六六三万一〇〇〇円である(千円未満切り捨て)。

2  (総相続財産額、総課税価格及び総相続税額)

本件相続における総相続財産額は四億三六〇〇万一四七七円、債務等は六一二万七五一四円、三年以内の贈与財産価額は八七九万七五六六円であるから、別表記載のとおり、総課税価格は四億三八六七万円、総相続税額は八四四七万四〇〇〇円となる。

3  (原告の納付税額の計算)

以上の原告の課税価格及び総遺産額からすると、原告の納付税額は一七九八万〇八〇〇円になる。

4  (結論)

よって、被告が原告に対してなした本件更正処分は、適法である。

四  被告の抗弁に対する認否

1  被告の抗弁1(原告の課税価格)のうち、前段の原告が本件相続で取得した財産の価額の事実及び中段の原告が取得した財産の価額から控除される債務等の額がないことは認めるが、その余は否認する。被相続人の債務等は、相続人が共有していた相続財産のうちの現金から支払われたので、原告も、右債務等のうち法定相続分である六分の一を相続していることになる。

2  同2(総相続財産額、総課税価格及び総相続額)の事実のうち、相続人らが本件修正申告で申告した総相続財産額が四億三六〇〇万一四七七円、債務等は六一二万七五一四円、三年以内の贈与財産価額は八七九万七五六六円であり、それによると総課税価格は四億三八六七万円、総相続税額は八四四七万四〇〇〇円になることは認めるが、実際の総課税価格は否認する。

3  同3(原告の納付税額の計算)については、原告の課税価格及び総相続財産額が被告主張のとおりであれば、原告の納付税額は一七九八万〇八〇〇円になることは認める。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  請求の原因について

請求の原因1ないし6の事実は、すべて当事者間に争いがない。

二  被告の抗弁(本件更正処分の適法性)について

1  被告の抗弁1(原告の課税価格)のうち、原告が本件相続で取得した財産の価額の事実及び原告が取得した財産の価額から控除される債務等の額はないことは当事者間に争いがないから、課税価格は四六六三万一〇〇〇円となる。

この点につき、原告は、被相続人の債務等は、相続人が共有していた相続財産のうちの現金から支払われたので、原告も、右債務等のうち法定相続分である六分の一を相続していることになる旨主張するが、その趣旨は不明であり、主張自体失当というほかない。なお、成立に争いのない甲第五及び第七号証によれば、被相続人は公租公課二八〇万六九四〇円、葬式費用三三二万〇五七四円の合計六一二万七五一四円の債務等を負担していたところ、高裁決定は、これを控除した残りの遺産に基づいて分割代償金二七六万九一二四円を算出していることが明らかであるから、原告が取得した財産の価額から控除される債務等は存しないものである。

2  被告の抗弁2(被相続人の総課税価額及び総相続税額)の事実のうち、原告等が修正申告で申告した総相続財産額が四億三六〇〇万一四七七円、債務等の金額は六一二万七五一四円、三年以内の贈与財産価額は八七九万七五六六円であり、それによると総課税価格が四億三八六七万円、総相続税額は八四四七万四〇〇〇円になることは当事者間に争いがない。

被相続人の総課税価格について判断する。

相続人らが平成元年七月六日、本件修正申告をし、総相続財産額を四億三六〇〇万一四七七円(うち未分割財産は二六五七万九五七五円)、債務等の額を六一二万七五一四円、三年以内の贈与財産価額を八七九万七五六六円と申告したことは当事者間に争いがない。そして、右申告に従うと、総課税価格は、総相続財産額に三年以内の贈与財産の価額を加えた額から債務等の額を減じた額である四億三八六七万一五二九円になるところ、本件更正処分では一万円未満を切り捨てて四億三八六七万円としている。そして、右末分割財産については、高裁決定があり、遺産分割が確定したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第七号証によると、右高裁決定によって右修正申告で相続人らが申告した財産以外の財産の存在が認められたわけではないのであるから、本件更正処分において、総課税価格を本件修正申告による申告額に基づき、四億三八六七万円であるとしたことは正当であると認められる。

3  同3(原告の納付税額の計算)が正しいことは当事者間に争いがない。

4  よって、課税価格の総額を四億三八六七万円、原告の課税価格を四六六三万一〇〇〇円として、原告の納付税額を一七九八万〇八〇〇円とした本件更正処分は適法である。

三  以上により、原告の請求は、理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 菅原博之 裁判官 寺西和史)

別表 相続税の課税状況一覧表

〈省略〉

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